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石の島コラム

弘法大使を目指して登れや心経山!その苦行、実はたった徒歩40分なのですが・・・

石の島コラム
弘法大使を目指して登れや心経山!その苦行、実はたった徒歩40分なのですが・・・
四国と言えばお遍路さん。そう思い起こす人もきっと多くいらっしゃるのではないでしょうか。そんな四国遍路の舞台の一つである香川県。真言宗、そしてもちろん遍路の祖として名高い空海こと弘法大師は、もはや香川のスーパースターと呼んでよいでしょう。
なぜなら仏門の教えを広める以外にも多大なる功績を香川県にもたらしたからです。たとえば、「まんのう池」(香川県まんのう町)の治水工事。まんのう池は周囲20キロメートル、水深約22キロメートルで日本一大きなため池です。この工事が約1200年も前に実現できたのも、当時の中国から様々な技術を学び帰ってきた弘法大師がその指揮を執ったからだと言われています。


ただ、今回紹介したいのは香川のお遍路さんではなくて、香川の離島のとある山。なんと丸亀市の離島にも、あの弘法大師が修行をしたとされる山があるのです。その名も「心経山」。彼ほどの高僧が修行した山の頂に至るには、どんな苦難が待っているのか・・・!?

といっても、山のふもとから40分も歩けば着くんですけどね。実際、いまや心経山は地元・香川の山好きたちが訪れる、気軽なハイキングスポットとなっています。それでも40分だからといって舐めてはいけません!頂上から見下ろす瀬戸内海たるやこれはこれは雄大なのです。

というわけで前回の尾上邸の紹介に引き続き、島の地域協議会のメンバーである筆者が北海道から来た友人を心経山にご案内した様子を記事にしてみました。
頂上までの道中では一部身体的な危険を伴うエリアもございますので、心経山に遊びに来られるという方はこの記事を予習がてら読んでみてくださいね。


それでは弘法大師を目指して!?
ハイキング、スタートです!!

登山口をまずは目指すのだ!


では改めてこの心経山はどこにあるのか?それは香川県丸亀市の離島「さぬき広島」です。丸亀港から旅客船または大きなフェリーに揺られて到着する場所、それは島の玄関口の江の浦港。さて、ここから歩いて登山口へ・・・

というには、ちと遠い。そのため是非島内を巡回するコミュニティバスを利用し、まずは「青木」というバス停までご移動くださいませ。


広島診療所

さてバスを降りて向かうは登山口。青木バス停から南へ200メートルほど歩くと心経山の入り口を知らせる大きな石板を見つけることができます。



ちなみにこの石は島の名産の「青木石」で作られたもの。登山口がある青木集落はかつて採石業で大きく栄え、現在でも数軒の採石業者が稼働を続けています。
ちなみに心経山と隣接する王頭山は山中で登山道が繋がっており、江の浦港から王頭山→心経山の順で二つの山を楽しむこともできる(所要3時間)。王頭山には心経山同様に日本遺産にも選出された王頭砂漠と呼ばれる名所があり、こちらも島でのハイキングの見どころの一つである。

登山開始!


閑話休題。ここからいよいよ山を登ります!
まず登山を楽しむ皆様に見つけてほしいのがこの看板。



一目瞭然。登山時はこの看板がときおり現れますので、それらを辿りながら山頂をめざしてくださいね。


登山道入口

登山道の入り口からおよそ20分程度はコンクリートで舗装された道が続きます。そのため比較的体力的には楽に進むことができるかと。一方で雨上がりや落葉の時期はとっても滑りやすいため、要注意です!



筆者は12月頃に訪山。そのため愛らしい落葉も散見された。

石、石、石


登山の道中には石を感じるスポットが多々あります。さすが日本遺産石の島。もしかすると、感じざるを得ないといった方が正しいのかもしれません。


巨石と北海道から来た友人・萌さん。石陰にお地蔵さんもいる。

なにせ人間よりも大きな石が随所に転がっているのですから。その昔、山で切り出された石は転がすようにしてふもとへと運搬していたそうです。そのため、この石も何百年も前の島民が切り出したのかも・・・


石の隙間からすっくと伸びた竹

またこのポイントから少し進むと、過去に稼働していた採石場にたどり着きます。


文字通り、山積する切り出された石

本当に急な斜面です。そこへ見事なまでに積みあがった石。これはきっとここでしか見られない不思議な光景かも・・・!
なお進入するのはとっても危険ですので、遠目でみるだけにしてくださいね。もし採石場を実際に見学したいという方は、ガイド付きでゆっくりと見学できます。(※要予約、詳細記事末尾にて)


その後の道中①コンクリート敷きの斜面が終わると、心経山への分岐点が見える。


道中②山肌がむき出しの登山路になるので、注意が必要。ここでも多数の石が確認できる。


道中③この大きな石の階段がみえれば、ゴールまであと数分

大師堂





山頂直前で登山者を出迎えてくれるのが大師堂。その名の通り、弘法大師の名を冠したお堂です。山頂に存在しているにもかかわらず、地元の人々の手で長らく保全されてきました。



門をくぐると弘法大師の供養塔もあります。ちなみに地元で弘法大師はお大師さんと呼ばれるほどに親しい存在。そんなお大師さんへの信仰の一つとして、毎年旧暦の3月21日には「お大師まいり」と呼ばれる行事が催され、多くの人が島内に設置された地蔵を歩きながら参拝します。

★お大師参りについて
瀬戸内海の島々には「島四国」「島遍路」「お大師参り」などの呼び名で、四国遍路を模した行事が古くから存在しています。島内には四国遍路八十八カ所巡りの寺院と同じ名前が付けられた地蔵が配置され、それらを参拝することで本遍路と同じだけの御利益があるとされているのです。また本遍路同様に巡礼者に対する「お接待」もあり、このさぬき広島でもお大師参りの際には島民から参加者に茶や菓子などが振る舞われます。もちろん島外者の参加も可能です!

山頂はどこだ!?


さて、お大師さんへのご挨拶も済んだところでこの山も終わり。
ではなく、実は続きがあります。



大師堂を背中に左向け左!すると細い道が続いています。この先が山頂へと続いているのです。
そしてここから本当に要注意!一度足を滑らせると、途中で出会った石たち宜しく、山の下まで転がっていってしまいます。そのため、悪天候や強風の日また小さなお子様や足腰に不安のある方について、無理に山頂を目指すことはお控えくださいね。



先ほどの細い道を進むと、岩壁にたどり着きます。この岩の上が山頂です。なお右側からの進入で、安全に登ることができます。


ついに、山頂!




登ってきた岩からひょっこり顔を出すと、現れるのは空と海。
瀬戸内海を一望なんて表現はよく耳にしますが、ここは文字通り周囲360度を一望できます。北は岡山県、南を向けば香川県。中・四国地方を一度に視野に入れることのできるレアスポットです。



また瀬戸内ならではの景色と言えば、多島美。小さな島がぽつぽつと現れるその姿もぜひ目に焼き付けてくださいませ。

さてさて、これまでの写真を実際どんな場所から撮っているのかといいますと・・・




ご覧の通りの断崖絶壁ですので、改めて足元にはお気をつけて!

心経山に行ってみよう!


心経山はとっても気軽に瀬戸内を心行くまで堪能できる日本遺産!
ぜひ一度、その山頂で海を、空を、そして島を全身で感じてみてくださいね!

ちなみに、お大師さんを目指した我々が山頂で思ったことは「腹減った」でした。ザ・煩悩。

お大師さんの背中は残念ながら、まだまだ遥か遠くにあるようです。
ただ、山頂で飲んだコーヒーは格別でした!

<心経山へのアクセス>
① 丸亀港よりフェリー(40分)、旅客船(20分)で江の浦港へ移動。
② 江の浦港からコミュニティバスにて移動(20分)。青木にて下車。
③ 下車後、南へ徒歩2分ほどで登山口着。そこから山頂へ徒歩40分程度。

<採石場見学について>
ご予約は以下のページを参照の上、青木石材協同組合へお問い合わせくださいませ。
https://www.marugame-happylife.jp/islands/info/entry-108.html

<筆者プロフィール>
唐﨑翔太
1995年生まれ、大阪府出身。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻修了(観光学修士)。2020年4月にさぬき広島に移住し、農家民宿&ゲストハウスである島旅農園「ほとり」を開業。現在は宿業のオーナーである以外に、①島伝統の唐辛子「香川本鷹」の生産者、②丸亀市内の貧困家庭向け児童支援施設とタイアップした「お金の学校」の講師、③香川県の地域ライター、④香川県庁・丸亀市役所委嘱の移住相談員としても活動している。
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