高木 智仁さん
高木さんは、丸亀市綾歌(あやうた)町で生まれ、東京のインテリアメーカーに入社し、Uターンで丸亀市に戻ってきました。現在は、インテリアショップCONNECTで代表をされ北欧の食器や家具、照明などを販売をしています。また、空間作りの提案、空き家リノベーションなど多岐にわたるご活躍で地元を盛り上げています。インタビューは過去最高2時間!地域とのかかわり方など、勉強になるお話をたくさんしてくださいました。
-東京から丸亀市にUターンされている経緯をお聞かせください。
もともとインテリアにかかわる仕事がしたいと思って東京のインテリアメーカーに営業として勤めたんです。そのメーカーは取り扱い商品も多く様々な仕事を経験しました。
仕事は楽しかったんですが、提案したいと思うプランニングより、納期と価格を重視することが多くてインテリアが好きでこの世界に入ったのにむなしさを感じるようになっていきました。
東京の生活が合わないな…感じるようになっていったんです。満員電車や高い野菜を買うこともイヤでしたし、東京にいるからこそいけるスポットにも人が多いから行かない…となるとせっかく東京に住んでいてもメリットがないなぁと。
東京以外でやっていく、と考えた時に田舎がイヤで東京に出てきたけど、仕事さえ作れば一番理想的なんじゃないかなと思うようになりました。
-地方に行くことに不安はありませんでしたか?
私は地方で、田舎だからこそできることがあるんじゃないかと思います。情報発信をしながら価値を共感してくれる人がいればいいなと。
都会の人は田舎に帰ったら仕事がないと思っている人は多いですよね。田舎は農業しかないというイメージとか。移住者フェアとかでも1次産業系のものを多く紹介しているのが目立つのでそう思ってしまうんですね。
でも、本当はそうじゃなくて、地域の企業でブランディングや情報発信について困っているところって、いっぱいあるんです。都会に住んでたからこそ構築できるネットワークを活かした仕事ってありますよね。
-高木さんは丸亀市に戻ってきてからはどのようにビジネスを始めたのでしょうか?
両親が贈答品店をしていたのでそちらを続けながら、「CONNECT」というお店を始めました。最初はインターネット販売で雑貨からスタートしていきました。
「CONNECT」のコンセプトに「作り手の思いをつなげていこう」ということを掲げているんです。「暮らしがよりよくなるように」と思って作られたデザイナーの思いをつなげていこう(CONNECT)ということで名付けました。
-リノベーションなどの取り組みはどのように始まったんですか?
CONNECTでは「シンプルで心地よいくらしを提案する」というミッションを掲げているんですが、地域がよくならないと暮らしがよくならないよね、ということに考えが辿り着いたんです。お店の周り空き家が多くあることに気がついて、なんとかしたいと思うようになりました。
お店の前には田園風景が広がっています
家具の買い付けや、建材の輸入でデンマークに通っていたんですが、インテリアについて現地の人はどう思っているのか、どんな使い方をしているのかなどが知りたくていろんな場所に出向いていたんです。ある建物を視察した時にデンマークの建築学科の教授と出会い、学生のためにスタディトリップを企画しているのでインターン生を受け入れて欲しいという相談を受けました。
デンマークで買い付けをする高木さん
もともと日本はデンマークの学生にとって評価が高く、特にせとうちの中で活動したいというリクエストもあったみたいです。
空き家問題をどうにかしたい!と思っていることと重なってデンマークの学生と一緒に空き家をリノベーションしたら!と、なっていったんです。
デンマーク側から本島で活動したいと相談があったので、市役所にいったり、地元の自治会さんにも相談させてもらいました。本島の民宿の方もシーズンオフということもあって受け入れてくれました。それから本島にデンマークの学生がやってきて2週間の間滞在しました。地域の方とのふれあいから始まって、空き家リノベーションを一緒に進めていきました。
空き家リノベーションに携わるデンマークの学生たち
日が経つにつれ島の人とも仲良くなって、ごちそうになっていたり、パンとか何かもらっていたり、、帰る時にはおじいちゃんおばちゃんがしっかり見送ってくれているのを見て、この取り組みは継続させよう!って思ったんです。島の人にお世話になったんだから何かやらないと!という意識が芽生えたんですね。
これからも継続的に関わりたい、と思っても何も接点がないと足が向かなくなってしまいますよね。そんな時に島の方から、営業していた定食屋さんがお店をしめるから空き店舗になることを聞いたんです。どんな状況か聞くだけだったんですが、「いつからやるの?」という話の流れで、できる範囲でお店を始めました。
それが「Honjima Stand」です。2018年の11月にオープンしました。
Honjima Stand
本島スタンドは観光案内所と隣接している飲食店です。島のレセプションというコンセプトで「食」をベースに本島をどうアピールするのかということを課題に取り組んでいます。島の案内をしたり、魅力を伝えたり、島内から島外へ情報発信をしていきます。
-本島で2019年に行われたフリッツ・ハンセン庵が注目されましたね。どのようにプロジェクトが進んで行ったのでしょうか?
フリッツハンセン庵 =丸亀市本島の笠島重要伝統的建造物群保存地区である笠島地域の一軒の空き家をリノベーションし、フリッツ・ハンセンのインテリアでコーディネートした、期間限定の無料休憩所。
日本の家屋をリノベーションし、デンマーク製の家具を置いたフリッツ・ハンセン庵
私はインテリアが持つ力は大きいと思っています。なんとなく整備されたところにイスとテーブルをおけば人が集まれますよね。空き家という社会課題にインテリア業界がどのようにかかわっていくか、というテーマを持ってデンマークのインテリアブランドの中で1番大きい会社「フリッツ・ハンセン」と一緒に課題に取り組むことにしました。
PR効果が絶大で、かなり好評でした。結果としてはチャレンジしてよかったです。他の地域からも「やってみたい」とお声掛けもいただきました。
フリッツ・ハンセン庵のある笠島集落は塩飽水軍・塩飽廻船の拠点として栄え、日本遺産に認定されています
-様々な取り組みをされていますね!これからの取り組みについても教えてください。
今年、「本島不動産」というのを立ち上げようと準備しています。
島に空き家はたくさんあるけれど管理がされていない状況です。空き家の持ち主が島にいることは少なくて、いろいろ調査をしてくことも大変なんですが、将来的に島を拠点にしていこうと思ってくれる人が増えていけばいいなと思っています。
最初から移住定住をねらうつもりはないんです。まずはゲストハウスや宿で島の体験などを通じて興味を持ってくれている人を呼び込むところから始めていって、空き家のオーナーになったり、リノベーションなどをしてもらう、そして、定期的に訪れてくれる人が増える。そうすることで将来的に拠点にしていこうと思う人が段階的に増えていけばいいなと思います。
いろいろやって思うのは「地域」というキーワードを組み合わせていくことで、
そこにしかない製品やサービスが生まれ、ブランディングに有効活用できる
ということです。
地域=行政ではなく、企業などが前に出ていくことで地域が活性していくことが
継続していくために大切ですね。
インタビュー:2020年3月