平井 明さん
平井さんは塩飽諸島最大の島「広島」の北部、茂浦地区で生まれ育ち現在は、NPO法人石の里広島の会長を務めています。NPOでは地域づくりに大きく携わり、今後の島のあり方を考え日々活動されています。インタビューに訪れた際、奥様の光子さん、もと石工さんなどのお仲間と一緒に温かくお迎えをしてくださいました。
-平井さんは生まれてからずっと広島ですか?
丸亀市の酒屋さんに就職したんだけど、島から通ってました。最後の方だけ丸亀市にいて、退職してからはずっと広島です。奥さんは丸亀市役所で働いてたけど、いろんな情報を島に届けたいから「島にいたい、島から出たくない」っていって。
-島から出たくない!って愛を感じますね。平井さん自身はどうですか?
島で生まれ育って最後までおらんといかん!という気持ちもあるし、今は立場上の責任もあるし。まあ、島が好きだな。島に恩返しをしていきたい。
広島をPRする広島のみなさん
-立場上というのはNPO法人石の里広島の会長ということですね。いつから会長を務められていますか?
6年前です。その前は副会長をしてたけど世代交代ということで。
-「NPO法人石の里広島」では、住民の方々のために、デイサービスセンター、コミュニティバスの運営や、手島自然教育センターの運営管理など地域づくりのための様々な活動をされていますね。平井さんが会長に就任されてからはじめた取り組みはありますか?
うん、あるな。里山保全とか、古民家再生とかそういうんをNPOでできるようにしました。
里山保全っていうのは“竹問題”っていうのがあって…島が、高齢社会になって竹を切ったり曲げたりするのがなかなか難しくて、最近山に竹がすごく増えてきたんです。このままじゃ島全体が竹になってしまう!ということで、ちょっとでもみんなの役に立たとうと思って竹を粉砕する機械を去年入れました。結構、機械は高いからなかなか買えなかったんだけど、寄付してくれる人がいたからな。
それから古民家再生。この島が日本遺産になった時に、石の文化とそれを運んだ廻船問屋の尾上邸も日本遺産の一部になったんで、再生させようじゃないか!ということで古民家再生をいれたわけなのです。今後の動きは検討中です。大変なこともあるけど、これからやな。
尾上邸
-古民家再生といえば、わたしたちも泊まらせてもらったゲストハウス「ひるねこ」「たびねこ」も平井さんたちが再生されたんですよね!
それは、旅作家の小林希さんがせとうちの取材で訪れた時に、泊まって話をする場所が必要だ、ということがきっかけにプロジェクトが進んでいったんです。今まで使われてなかった部屋の片付け、掃除をみんなで行ってきれいにしました。2016年にひるねこができて、1年後にたびねこが作られました。
ゲストハウス ひるねこ
-素敵な取り組みですね!平井さんはこれからの広島をどのようにしていきたいと考えていますか?
島外からの人増やしたいですね。できたら移住してくれたらいいなと思います。丸亀市さんとも空き家対策などもやってたりするけど、実際に人が住めるようにしていかないかんからね。
「(島に)くるよ、くるよ」と言ってくれる人はたくさんいるけど、いざとなると(移住者にとって)大変なことがたくさんあると思う。たしかにここにきて遊んで時間を過ごすにはいいかもしれないけど、生活するにはきびしいこともあるかもしれない。そういう対策を考えていかないといけないね。
でも本当にここに来たい!と思ってくれる人はたくさんいるんだよ。今度くる25歳の子は北海道から。こないだ来た人は88歳!あとは、ハワイから住みたいんだ!ってやって来る予定の人もいるし。
茂浦のまちなみ
-広島は人を問わず魅力を感じるところなんですね!
最初は「ひるねこ」(一軒家のゲストハウス)に何回か来て泊まって飲んだり食べたりしてるうちに「こんなところに住みたい!」っていう人が多いね。
なんで広島に?とこっちは思って尋ねるんだけど、だいたいみんな「ここの人間性が気に入った」っていう人が多いかな。われわれもここにはおもてなしの心とかそれくらいですよーっていうんですけどね。
-他にもHotサンダルプロジェクトのことを奥様にも伺ったのですが、すごく魅力的なプロジェクトですね!
Hotサンダルプロジェクト=毎年夏に行われる島民との交流を深めながら美術作品の制作や発表を行うアート・プロジェクト
最初は毎年続けると思ってなかったけど、好評だったから続いているんです。
今はプロジェクトの経験者が4人ほど移住してくれてるし、丸亀市さんとも若い子が来れるような機会を設けていこうって。
-様々な活動をされてますね! 最後に平井さん自身、島で生活していく上で楽しんでいることなどあったら教えてください。
日本遺産とか色んなことをする今は合間に畑とかしてます。これからの時期、夏野菜のトマト、キュウリ、ナス、とうもろこしとか、あと、香川本鷹(とうがらし)とかも育てていこうかなって。まあ、忙しいけどたらんたらんという感じでおりたい。それに対してみんなも協力してくれるけん!
香川本鷹=かつて塩飽諸島や荘内半島で栽培され、絶滅が危惧されていたトウガラシ。香川県最古の特産農産物の一つとして伝えられています。
インタビュー:2020年3月
インタビュー時は奥様やご友人の方々にも貴重なお話をしていただきました。ありがとうございました。